ヘソの尾の愛
【ヘソの尾の愛】
十月十日、胎児と母親はヘソの尾で繋がっている。
その集大成が出産だ。
子供への愛情の大きさを表す際に「お腹を痛めた子だから」という表現が使われる。この表現は、通常自然分娩のことを示しているが、様々な事情から、それ以外の方法で出産する妊婦さんもいる。
ごく最近まで、帝王切開など自然分娩以外の方法を用いた出産では、子供に対するボンディング(対児愛着)の形成に差が出ると認識される傾向にあった。
そのため、帝王切開で出産をした母親は、「ちゃんとしたお産をしていない」と、うがった見方をされるケースがあり、さらには、自身で自らの出産に対して責める気持ちに悩まされる母親も多いと聞く。
とある大学の周産母子センターの研究で、初産婦と経産婦の間には25、9%のボンディングの程度差が見受けられたが、自然分娩と帝王切開の出産方法による数値には差異がないことが判明した。
産道を通ってお腹を痛めても、メスを使ってお腹を痛めても「子を愛する気持ち」には、同等の愛情があるということだ。
一方、初産婦に比べ経産婦の愛着率が高かったことを考えると、女性の強さと愛の深さを感じる。
男性だったら痛みで死んでしまうと言われるほどの堪え難い経験をしても、まだなお、新たな命をこの世に誕生させ、生まれた我が子に愛を持つというのは並大抵のものではない。
お腹に我が子が宿った瞬間から母親の愛は育つ。
どのような経過をたどったとしても、その愛の深さと大きさは変わらない。
母親の価値は、どのように出産をしたかで決まるものではないように思うのだ。
胎児だった子供が成人した時に、どのような人物であるかを見れば母親がどのように子供を愛し慈しんできたかがわかる。
出産という女性としての最大の喜びを自他共に心から祝える世の中であってほしいと願う。
2020/04/16(thu)
An impression and the short essay which read Okinawa Times
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